相続法(民法の相続部分)が1980年以来、約40年ぶりに大幅に改正されました。大幅に改正された理由として、超高齢化による老老介護問題、離婚、再婚件数の増加といった家族のあり方の変化があります。

今回の改正のなかでも不動産に関係する「配偶者の居住権の保護」と「遺言制度の見直し」についてみていきたいと思います。

自筆証書遺言の方式の緩和

近年、遺言書を残す人が増えているようです。終活への関心の高まりも理由のひとつですが、遺された家族が困らないように、あるいは遺していく財産を有効に使ってもらえるようにという想いの現れといえると思います。

遺言書というと、「自筆証書遺言」といって今までは財産目録も含めて、遺言書の全文を自書する必要がありましたが、今回の改正では目録の部分についてのみ、パソコンでの作成や通帳のコピー添付が認められるようになりました。本文については従来と変わらず自書が必要ですが、作成の負担はかなり軽減されるといわれています。

自筆遺言書を法務局で保管できるように

また作成された遺言書は、今までは自宅で保管し開封する際は家庭裁判所に持ち込んで検認を受けるなどの手間が掛かりましたが、今回の改正では作成された遺言書の原本を法務局に保管が可能になります。これにより紛失や第三者による書き換えなどのトラブルから回避されます。

遺言書といえば、「公正証書遺言」が一番の効力がありますが、手続きが面倒でハードルが高いものでしたが、比較的簡単に安全な形で遺言書を残せるようになったのは大きな改善点です。

残された配偶者への配慮「配偶者の居住権の保護」について

今までの法律では、例えばご主人を亡くした奥さんが遺留分や遺言によって奥さん以外の第三者に住まいが遺贈されるケースなどの場合、今まで住んでいた住まいを追い出されるということがありました。

今回の改正では、「配偶者短期居住権」により仮に追い出されることになっても6ヵ月の猶予が与えられる権利や、「配偶者居住権」により配偶者が今までどおりに建物に住むことができる終身の権利ができました。

また、建物に住む権利だけを与えられても、預貯金は手元に残らず老後の生活に影響を及ぼす、という場合もある為、配偶者に不利益にならないように保護する遺産分割の選択肢も出来ています。

配偶者居住権の具体的な事例

具体的には以下のようになります。

例です

現行制度では・・・

妻が自宅を相続しようとすると・・・

となってしまいます。

しかし、今回の改正後は、

となり、

この結果、妻4,000万円 子4,000万円の相続額となります。

負担付き所有権は、自宅の評価額から配偶者の年齢などを考慮した配偶者居住権を差し引いた額です。配偶者居住権は、配偶者が亡くなった時に消滅して子に帰属することになります。

義父の介護をしていた妻にも相続権

身内の事情に考慮したその他の改正としては、例えば長男が先に亡くなっていて長男の妻が長男の父親(義父)の介護に従事していた場合などで、従来は相続権のなかった長男の妻にも権利が与えられるようになりました。

このように、現代の家族の形や生活に即したルールが取り入れられるようになり、相続時の親族間のトラブルが減少できるようになったようです。

 

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